2011年05月30日

『レインツリーの国』

レインツリーの国 (新潮文庫 あ 62-1)
レインツリーの国 (新潮文庫 あ 62-1)

『レインツリーの国』有川浩/著。新潮文庫。

「 彼女は──彼女たちは、耳が不自由な分だけ、言葉をとても大事にしているのだ。第一言語として自分たちに遺された言葉を。その言葉を大事に使って、真摯に理屈を組み立てる。
 だから伸行はひとみの言葉に魅かれるのだ。あれほど真摯に使われる言葉はまたとないからだ。自分と似ていて少し違う心地よさ──それは、ひとみが言葉の限りある愛おしさを知っているからだ。
 その言葉で大切な思い出の本を語られたら、魅かれない奴はいないだろう。」


 中学生の頃読んだライトのベルを検索して、その読書感想を読んだ相手にメールを送って、そこから始まる恋愛小説の定番と言えば、定番。彼女の方に聴覚障がいがあるのも定番と言えば定番。
 それなのに、何が面白いのかといえば、男の側の感情をつづるメールがうまい。自分の言葉を文字で伝える、そのスキルがうまい。
 メールのやりとりがうまい。

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 written by 桔梗 at 16:25 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2011年02月19日

『クジラの彼』

クジラの彼 (角川文庫)
クジラの彼 (角川文庫)

『クジラの彼』有川浩/著。角川文庫。

「腹筋割れてて何おかしいんだ? こっちゃ伊達や酔狂で国防やってねえんだよ。有事のときにお前ら守るために毎日鍛えてんだよ。チャラチャラやってて腹なんか割れるか」


 てなわけで、有川作品、自衛隊ベタ甘ラブ短編集。
 収録作品は、
・クジラの彼
・ロールアウト
・国防レンアイ
・有能な彼女
・脱柵エレジー
・ファイターパイロットの君
 以上、6作品。

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2010年11月23日

『狐笛のかなた』

狐笛のかなた
狐笛のかなた

『狐笛のかなた』上橋菜穂子/著。理論社。

「……この子らは、蜘蛛の巣の、細い糸の先でふるえている、透きとおった水の玉のようだ」


 山奥の屋敷に呪われているために閉じこめられているという少年・小春丸。里の外れに産婆である祖母と住む小夜。呪者に使われている異界の生き物の妖孤・野火。
 とある国内の領国同士ではずっと呪術による目には見えない争いが続いており、その呪いというか、感情の絡み合い憎しみあいはなかなか解けるものではなく、三人は我知らずその二領国の関係者だった。
 小夜が野火を助けたことから三人は出会い、政治や謀略とは無縁の素朴な感情で心引かれあい、それぞれを解放しようとする話……でいいのかな。
 以下ネタバレで。

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 written by 桔梗 at 09:29 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2010年05月30日

『村田エフェンディ滞土録』

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)
村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)


『村田エフェンディ滞土録』梨木果歩/著。角川文庫。

「私の スタンブール
私の 青春の日々
これは私の 芯なる物語」


 『家守綺譚』に手紙のみで登場した土耳古に研究員として派遣されている村田の話。最後に綿貫征四郎と藤堂も出てきます。続きを読む
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2010年05月24日

『あやし』

あやし (角川文庫)
あやし (角川文庫)


『あやし』宮部みゆき/著。角川文庫。

「楽して生きる何よりの近道は、結局は真面目に働くことだ。
いいな、忘れるんじゃないよ」


 江戸時代を舞台に懸命に生きる庶民と目に見えぬモノとの関わりを描く短編集。

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2010年05月09日

『家守綺譚』

家守綺譚 (新潮文庫)
家守綺譚 (新潮文庫)


『家守綺譚』梨木果歩/著。新潮文庫。
「──自分の取り扱いに、難渋している。
──大気がこれだけ騒ぐといろんなものが出てくるのだ。」

 亡くなった親友の実家の家守をすることになった「私」=綿貫征四郎の家と亡き友と庭とその街を取り巻くものとの記録。

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 written by 桔梗 at 18:43 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2010年04月15日

『走れメロス』

走れメロス・おしゃれ童子 ヤング・スタンダード (集英社文庫)
走れメロス・おしゃれ童子 ヤング・スタンダード (集英社文庫)

『走れメロス』太宰治/著。集英社文庫。

 『夢のあと』のsakuraさんの紹介で、太宰治を。
 表紙のイラストをジャンプの人気漫画家に書かせたら売れちゃったシリーズの文庫を買いました(新刊で一番安かったので)。購読・購買層を広げたい気持ちはとてもよく分かるけれど、この表紙に気持ちがとても微妙です。中身は変わらないと思うのですが、古本屋を回って他社の文庫を手に入れれば良かったなとさりげなく後悔。

 収録作品は
・燈籠
・満願
・富嶽百景
・葉桜と魔笛
・新樹の言葉
・おしゃれ童子
・駈込み訴え
・走れメロス
・清貧譚
・待つ
・貧の意地
・カチカチ山
 の12作品。

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 written by 桔梗 at 18:32 | Comment(2) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2010年03月22日

『青の時間 TIME BLUE』

青の時間 (文春エンターテインメント)
青の時間 (文春エンターテインメント)

『青の時間 TIME BLUE』薄井ゆうじ/著。文藝春秋。

 たぶん絶版。一応ファンタジーという分類。
「素顔が隠されたマジシャン”ブルー”。
僕は彼のなかに幼なじみの姿を見た。が、
彼の幹部スタッフのなかにも、なぜか”ブルー”の
影がちらつく。そして哀しい真実が
明らかになる時、彼は姿を消した……。
”ブルー”は誰なのか、そしてどこへ行ったのか。」

(帯裏紹介文より)

 青の時間は『ファーブル昆虫記』の昆虫たちが眠る時間からとったそう。

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 written by 桔梗 at 20:02 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2010年01月18日

『GOTH リストカット事件』

GOTH―リストカット事件
GOTH―リストカット事件

『GOTH リストカット事件』乙一/著。角川書店。

 ハードカバーの方を持ってます。カバーを外すと裏に隠し写真が。
 初めて読んだとき、気持ち悪くって怖くって「すぐさま古本屋行きにする!」と思ったのになぜか捨てられず、その後この人の本を何冊か買うことになりました。
 「ブラック乙一」と「ホワイト乙一」のブラックの方の本です。

 カバーの折り返し部分より。
GOTHICの略だが建築様式とはあまり関係がない
それは文化でありファッションでありスタイルだ
人間を処刑する道具や拷問の方法を知りたがり殺人者の心を覗きこむもの
人間の暗黒部分に惹かれるものたちがGOTHと呼ばれる
僕とクラスメートの森野夜がそうだ


 ま、端的に言ってしまえば、異常快楽殺人者たちとひたすら接触していく主人公たちの話です。ひたすら人が死にます。様々な方法で死んでいきます。ええ、気持ちは悪いです。そしてその結果、登場人物の一人に変化(少しの回復)が起こります。

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 written by 桔梗 at 01:52 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする

2009年12月04日

『魔性の子』

魔性の子 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)
魔性の子 (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)

『魔性の子』小野不由美/著。新潮文庫。

 『十二国記』シリーズの泰国の麒麟が日本に戻っているときのお話。
 十二国記を知らずとも読めますが、読んでいるとなお楽しい。

 ストーリーとしては、異世界から紛れ込んだ高校生がもとの自分があるべき世界に戻る話(相変わらず身も蓋もない説明だ)。その過程の葛藤と周囲の騒動を高校に教育実習にきた学生の視点から描かれます。

 人はこころのどこかでいつも、ここではないどこかに帰りたがっている。
 帰れる人、帰れない人、その違いはなんなのか。

 ──人が人であることは、こんなにも汚い。


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 written by 桔梗 at 14:46 | Comment(0) | 小説:日本 | 更新情報をチェックする