2014年02月19日

『加代の四季』

加代の四季 [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]
加代の四季 [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]

『加代の四季』杉みき子/作。村山陽/絵。岩崎書店。

「 土にとりついて、とけないで、上からおちてくるなかまをささえた、そのさいしょのひとつぶの雪を、加代は見たい。」


 昔、教科書に載っていた、「春はせんろからやってくる」の『加代の四季』を読みたくて買いました。

 収録作品は、
 ・『コスモスさんからお電話です』
 ・『おばあちゃんの白もくれん』
 ・『白さぎ』
 ・『わらぐつのなかの神さま』
 ・『ゆず』
 ・『旗』
 ・『加代の四季』
の、七作品。

 『コスモスさんからお電話です』

 コスモス通りは電信柱も電話ボックスもみんな花に埋まってコスモス通りを歩くと、自分もコスモスになったみたいで、とっても良い気持ちがします。そのコスモスのささやかな声を聞きつけて、主人公のルミは首の曲がったコスモスを支えてやります。そうするとコスモスから電話がかかってきて、日常のささやかな幸せを教えてくれるようになるのです。

 電話ボックス! 電信柱! ってところにまず、時代を感じました……。そして、今の子どもは家の電話に出ないよなぁ……と。
 コスモスから電話がかかってくるなんてファンタジックでいいなぁと思うのですが、今の子は受け入れがたいだろうな……とも思いました。昭和は遠くなったのね……。


 『おばあちゃんの白もくれん』

「雪がたくさんふると、白い花がたくさん咲く。もくれんは光のお酒を受け止めるためにつぼみが上を向いている」
 そうおばあちゃんは言います。めぐみはおばあちゃんの言うことが信じられないけれど、それでもおばあちゃんが白もくれんの花びらを川に流して、「海まで行くうちに水にとけて、お天気のいい日に、光のお酒みたいに蒸発してそれからいつか雲になって、冬になったら雪になってふってくる」という言葉を受けて、そしてその雪でまた白い花が咲く、という言葉を思い出し、それを受け入れます。

 四季の移り変わりと、食物連鎖というか命の巡り合わせを想像させるいいお話だと個人的には思います。
 木蓮は東北に春を告げる花です。桜よりも早く咲いて「春告げ花」とも言われます。
 わたしには桜よりも思い入れのある花で、木蓮柄の帯とかレターセットとかあるとついつい買ってしまいます。
 木蓮のつぼみが上を向いているわけは光のお酒を受け止めるためだというのも素敵だなあと思いました。


 『白さぎ』

 白さぎに仲間が来るまで寒いなか待っている少年に、普段の強がりのいじめっこではなく、普通の優しい心持ちをかいま見る、という話。
 好きな子をついついいじめてしまう心境は未だこの年になってもわかりませんが、強がっている子どもほど、何かこころに鬱屈を抱えている、というのはいつの時代でも変わらないのかもしれません。


 『わらぐつのなかの神さま』

 主人公の女の子のおばあちゃんが話す、自分とおじいさんの結婚のなれそめ。
 この話もわたしが子どもの頃の教科書に載っていて、心に残っている話でした。
 そして、わら靴なんか今の小学生に通用しないだろう……。雪下駄……。着物着ても雪が降ったらブーツだな。爪革とか手作りするけれど、雨の日になかなか着物着て出かけませんね。
 神は細部に宿る、というように、心を込めてモノを作り、そして良い行いをしていれば、見てくれている人はいるもんだよ、という話でした。


 『ゆず』

 雪の積もった道で、転げた荷物からゆずを持たされて老婆を目的地まで案内し、そしてゆずを返すときに、意味不明なお礼を言われる。自分一人の帰り道、寒さに手袋をはめた手を口元に持っていった時にゆずの香りが漂い、これがささやかなお礼だったのかとうれしくなると言う話。
 ハンカチにアロマを吹きかけて、手を拭いたときにいい匂い、とか、洗濯の脱水の際にアロマオイルかけて干すときにいい匂い、とか、加湿器にアロマオイル垂らしていい匂いとかやってる身としては、このうれしさはよく分かります。
 まあ、男性にしてみたら、いやな臭いがついたとか思うだけなのかもしれませんが。


 『旗』

 引っ越して来てすぐに交通事故に遭ってしまい、一ヶ月ほど学校を休んでいる少女。その少女の元に、端切れでパッチワークしてクラス旗を作るから、という話が舞い込む。クラスの一員として扱われたうれしさを胸に、布に刺繍をして渡すが、それ以来音沙汰なく、学校に行くことが出来る日、外を見るとクラス旗がひるがえっているという話。
 クラス旗……。
 うん、これもね、あんまり通用しないんじゃないかな……。
 こういうクラスの受け入れ方もあるよね、と思いつつ、まあ、転校・転入に良い思い出がないわたしとしては、ふーんと思ったのでした。


 『加代の四季』

 これが読みたくて買いました。

 「春は、せんろからやってくる。」


 「上からおちてくるなかまをささえたさいしょのひとつぶの雪を、加代は見たい。」


「──わたしもしあわせだけど、あの人たちもみんな、しあわせそうだな。
 おどるようにはずんで歩きながら、加代はそのことがいちばんうれしい。」


 うん。どれも覚えていました。
 詩情ってものをこれで理解した気がしますね。「雪が溶けたら春になる」ってやつです。
 改めて読んで、いいなあと思いました。

 作者の方は新潟の雪深いところのご出身だそうで、父の実家と近く、それでわたしにはこの雪深さの光景が余計に理解しやすいのだろうなと思いました。
 今の教科書には載らないのかもしれませんが、『加代の四季』は良いと思うなあ。読みなおして良かったです。
 written by 桔梗 at 15:10 | Comment(0) | 小説:日本の児童書 | 更新情報をチェックする
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